大学路1980’s 韓国現代演劇とソウル

大学路1980’s 韓国現代演劇とソウル

会期:2013年3月1日(金)~8月4日(日)
会場:演劇博物館3F 現代演劇コーナー
主催:早稲田大学坪内博士記念演劇博物館
共催:日韓演劇交流センター
入場無料

現代演劇シリーズ第41弾「大学路 1980’s―韓国現代演劇とソウル」展

韓国ソウル市の街路の一つ「大学路(テハンノ)には現在140あまりの劇場が集まり、世界でも例を見ないユニークな劇場街が形成されています。そこではTV界への進出を狙う若手お笑い芸人のライヴや、一幕ものの軽い恋愛コメディー、少人数のミュージカル、現代劇やダンス公演、近代劇の斬新な演出による上演など、娯楽性の高いものから芸術性を追究したものまで、多種多様な公演活動が、わずか1kmに満たない街路周辺のごく狭い地域の中で日々盛んに行われています。こうした独特の演劇文化が花開くその出発点は1980年代にありました。
本展ではこの大学路に視座を据え、街の変容と共に激しく揺れ動いた1980年代の韓国演劇を紹介します。日韓の演劇交流が益々盛んになる今日、本展が両国の演劇状況を新しい角度から据えなおす契機となれば幸いです。

https://www.waseda.jp/enpaku/ex/907/

大学路1980’s 韓国現代演劇とソウル

韓国現代戯曲ドラマリーディング Vol.6

韓国現代戯曲ドラマリーディング6

2013年2月20日~24日
シアタートラム

◯リーディング

海霧

作=金旼貞(キム・ミンジョン)
翻訳=宋美幸
演出=鈴木アツト

金旼貞

1974年、忠清南道唐津(タンジン)生まれ。幼い頃から作家になる夢を抱き、檀国(タングク)大学国語国文学科を卒業後、韓国芸術総合学校演劇院にて劇作科(芸術専門士課程)を専攻する。在学時に執筆したデビュー作『家族ワルツ』が、第7回国立劇場新作戯曲フェスティバルで当選。実話を基にして書かれた『海霧』は、2007年に劇団演友舞台で公演され、その年の韓国演劇ベスト7に選ばれる。
他の主な作品に『十年後』(劇団小さな神話戯曲公募当選)、『私、ここにいる!』(ソウル演劇祭新作戯曲公募当選)、『吉三峰伝』(ソウル文化財団公演芸術作品公募創作支援事業選定)、『その道で君に会う』、『ミリネ(天の川)』、『君の左手』など。また、国立劇団『オイディプス』、大田文化芸術の殿堂 『人形の家』の脚色も手掛け、2011年の秋には代表作を収録した戯曲集が発刊された。

『海霧』あらすじ

大海原に浮かぶ、一隻の船。その名は、前進号。サヨリ漁を営む前進号の男たちにとって、今日の決断はとても重要だ。度重なる不漁が、彼らをどん底まで追い込んだのだ。次に失敗すれば、船は廃業となる。最後の望みを抱き、前進号は出航する。
船上という閉ざされた空間の中で、男たちは感情を爆発させる。苦楽を共にしてきた仲間。しかし、彼らが起死回生に狙うのは、大漁の夢ではない。船に朝鮮族を乗せ、韓国まで密航させる裏の仕事だ。深まる乗員たちの対立の溝。窮地から抜け出すためとはいえ、これは危ない橋なのだ。不安と葛藤が、際限なく膨らんでいく。
ひっそりと闇の中を進む船を、いつしか、波と風が囲んでいた。雨足が強くなり、そして、濃い霧。海で出会う濃い霧を海霧という。何よりも怖いのはこの霧だ。波にも道があり、風にも道があるが、霧には道がないからだ。やがて、一つの事件が起こり、それさえも霧の中に飲み込まれていく……

海霧

白い桜桃

作=裵三植(ペ・サムシク)
翻訳=木村典子
演出=明神慈

裵三植

1970年、全羅道全州生まれ。ソウル大学人類学科を卒業後、韓国芸術総合学校演劇院劇作科に入学し学ぶ。98年、演劇院在学中に、ブレヒト作『コーカサスの白墨の輪』を翻案し、劇団美醜によって芸術の殿堂で公演される。これを契機に劇作家の道へと進み、99年、『十一月』(ソウル公演芸術祭招聘作)で本格的にデビュー。作と演出を兼ねる劇作家が多いなか、独歩的な作家の道を歩んでいる。07年、大山文学賞戯曲部門、東亜演劇賞戯曲賞(『熱河日記漫歩』)、09年、東亜演劇賞戯曲賞(『白い桜桃』)を受賞。近年の代表作として『銀世界』(10)、『蜂』(11)、『三月の雪』(11)などがある。この他、マダン劇、野田秀樹『赤鬼』、福田善之『壁の中の妖精』、井上ひさし『天保十二年のシェイクスピア』を脚色。現在、同徳女子大学文芸創作科教授。

『白い桜桃』あらすじ

ソウルから東南に150キロ離れた町、ヨンウォル。静かな山里に住み始めた三人の家族と犬。庭園住宅の庭は、土壌を均したばかり。隅っこにレンギョウの古木がひっそりと佇んでいる。世間から忘れられた小説家アサンは大病後、何も書けずにいる。妻であり舞台俳優のヨンランは、ソウルの稽古で忙しい。高校生の娘ジヨンは、林檎ばかり齧っている。秋のある日、寝てばかりの老犬ウォンベクがいなくなってしまう。死の近い老犬がとった行動を契機に、死んだように生きていた人たちの魂に色が灯り始める。
劇作家のペ・サムシクは、十人の登場人物のひとりひとりを花に例えている。私も花好きなので、彼がこの舞台にどんな花を咲かせたいのか、想像することができる。大陸の更地にすっくと立てる俳優たちが集まった。
どうにもならないことに人々が地団駄を踏めば踏む程、地は固まってゆく。
そうして実りは、花を愛でる間もなく訪れようとしていた。

白い桜桃

朝鮮刑事ホン・ユンシク

作=成耆雄(ソン・ギウン)
翻訳=浮島わたる
演出=広田淳一

成耆雄

劇団「第12言語演劇スタジオ」代表。演出家、劇作家。
1974年、大邱生まれ。延世大学国語国文学科在学中、東京外国語大学に交換留学生として来日。延世大学卒業後、韓国芸術総合学校演劇院演出科に進学、2006年芸術専門士(M・F・A)課程卒業。
2004年『三等兵』(作・演出)を水原・華城演劇祭などで上演して以降、劇作家兼演出家として劇団「第12言語演劇スタジオ」を主宰する。作、演出のかたわら、多数の日本の戯曲を翻訳、演出し、日本の演出家との共同演出による合同公演を行うなど、日本の演劇界との交流にも精力的である。また、日本支配時代を素材とした戯曲も数多く手がけ、人気を博している。
2010年『カガクするココロ―森の奥編』(平田オリザ原作)の脚色、演出にて第四回大韓民国演劇大賞作品賞受賞。

『朝鮮刑事ホン・ユンシク』あらすじ

日本支配下の京城(現ソウル)で実際に起こった事件に着想を得て書かれた戯曲。韓国人と日本人、韓国語と日本語、科学と迷信、現実と幻想が入り乱れて展開される奇怪な事件の顛末記。昭和8年、京城の西大門警察署管内で前代未聞の奇怪極まりない乳児切断頭部遺棄事件が発生した。内地から新たに赴任してきたホン・ユンシクを加え、西大門警察の面々は事件解決に向け動き出す。いったい犯人は誰なのか? 赤ん坊の首を切り落とした目的は何なのか? 上層部の方針で失踪児童を当たっていくが、解決に向かうどころか、事件は連続殺人の様相まで呈してくる。容疑者たちは皆、それぞれに怪しいが決め手を欠き、捜査線上にはついにトッカビ(韓国の妖怪)まで浮かぶ始末……。やがて捜査方法を巡って警察内部の対立は頂点を極め、ついに二手に分かれて赤ん坊の体を探しに墓を暴きに出かけることになる。そして、事件は驚きの終結を迎える……。

朝鮮刑事ホン・ユンシク

◯シンポジウム

日韓演劇交流の現在

金洸甫/成耆雄/松本祐子/坂手洋二

 

現代日本戯曲リーディング Vol.5

2012年1月27日~29日
明洞芸術劇場

◯リーディング

作=蓬莱竜太/翻訳=李惠貞/演出=アン・ギョンモ

プランクトンの踊り場

作=前川知大/翻訳=石川樹里/演出=ホン・ヨンウン

親の顔がみたい

作=畑澤聖悟/翻訳=木村典子&イ・ソンゴン/演出=金洸甫(キム・カンボ)

◯シンポジウム

2000年代以降の韓日演劇界の
新たな傾向と展望

ホ・スンジャ/西堂行人/前川知大/キム・バンオク(評論家)/成耆雄

◯翻訳

古い玩具

作=岸田國士/翻訳=馬政熙

ゲゲゲのげ

作=渡辺えり/翻訳=イ・ホンイ

韓国現代戯曲ドラマリーディング Vol.5

韓国現代戯曲ドラマリーディング5

2011年2月25日~27日
シアタートラム

◯リーディング

道の上の家族

作=張誠希(チャン・ソンヒ)
翻訳=石川樹里
演出=智春

作=張誠希

張誠希

1965年、江原道寧越生まれ。中央大学文芸創作科卒業、同大学院演劇学科修士。劇作家、演劇評論家。ソウル芸術大学兼任教授。1992年より演劇評論家として活動し、1996年に『青山に暮らさん』で国立劇場脚本公募創作部門受賞、さらに1997年には『パンドラの箱』が韓国日報新春文芸戯曲部門に当選し、劇作家としてデビュー。現在まで演劇評論と劇作活動を並行している。1998年大山文化財団文学人創作支援対象者選定。2001年文芸振興院新進文学人支援対象者選定。2007年文化芸術委員会芸術創作および表現活動支援戯曲部門選定。2008年『夢の中の夢』でソウル演劇祭大賞、戯曲賞受賞。
主な作品に、『夢の中の夢』(08)、『柊擬の森の思い出』(08)、『アンチ・アンティゴーネ』(07)、『水の中の家』(07)、『転生区域』(01)、『月光の中に進む』(00)、『A.D.2031、第三の日々』(99)、『この俗世の歌』(98)などがある。最新作は2010年秋に上演された『三人姉妹山荘』。1960年代に実際にあったスパイ団摘発事件をチェーホフの『三人姉妹』を下敷きにして劇化した作品。戯曲集に『張誠希戯曲集』(99)、『夢の中の夢』(09)がある。

『道の上の家族』あらすじ

舞台は晩秋のキャンプ場。妙に大きな荷物を抱えて一組の家族がやってくる。
一家は父母、老父母、少年の五人。痴呆症の老母、反抗的な少年…。
それなりに問題は抱えているようだが、何年ぶりかの家族旅行で幸福そうに振舞う一家。
だが幼い次男の不在が、不安の影のように家族に付きまとう。
劇が進行するにつれ、父親の失職と生活苦、一家の足手まといになっている老父母の存在が浮かび上がってくる。
一家の肩の荷を減らそうと、老妻とともに心中を計ろうとするが、そのタイミングさえ逃してしまう老父。
リフトから飛び降りるが、安全ネットにひっかかり、キャンプ場の管理人に連れ戻される少年。
裕福な家庭に養子にやったと家族を偽り、実は幼い次男を地下鉄の駅に置き去りにしてきた父もまた自殺を計るが失敗する。
死ぬことすらできず、希望のない明日を生きていかなければならない家族が闇に包まれていく。

道の上の家族

爾―王の男

作=金泰雄(キム・テウン)
翻訳=木村典子
演出=青井陽治

金泰雄

1965年、京畿道南楊州生まれ。劇作家、演出家。現在、劇団「優人」代表、韓国芸術総合学校演劇院劇作科教授。
ソウル大学哲学科在学中から俳優として演劇サークルで活動。卒業後、韓国芸術総合学校演劇院劇作科に入学し、 M.F.A(Master of Fine Arts)過程を終了。1997年、劇団「演友舞台」20周年新鋭作家発掘シリーズで『蠅たちの曲芸』を作・演出し、本格的なデビューをはたす。99年、東亜日報の新春文芸戯曲部門に『月光遊戯』が当選。2000年、劇団「演友舞台」で『爾』を公演し、東亜演劇賞など数々の賞を受賞し、代表作となる。この作品は05年に公開された映画『王の男』(イ・ジュニク監督)の原作としても話題となった。『門』(00)、『風船交響曲』(01)、『プルティナ』(01)を発表後、02年に『花をもつ男』で劇団「優人」を旗揚げ。『楽しい人生』(04)、『反省』(07)、『リンリンリンリン』(09)などを上演している。現在、『爾』(05年初版、10年再版/平民社)、『反省』(06/平民社)、『リンリンリンリン』(10/平民社)の四冊の戯曲集が出版されている。

『爾 王の男』あらすじ

俺の名は長生。孔吉とは無二の親友だ。二人で一座を率いて、旅回り。どこでも大人気だった。大道芸だよ、そんな上等なものじゃない。権力を笑い飛ばし、卑猥な話で客をわかせる。下ネタ満載だよ。しかも、歌舞音曲もにぎやかに、体を張った空中曲芸をやりながら!
そんな俺たちが、今や、王様お抱えの宮廷芸人だ。「戯楽院」直属の「京中優人」様だ。笑っちゃうね。孔吉の奴が、ふとしたはずみで、王様のご寵愛を受けて大出世。今や大臣。その幸運のお裾分けだってさ!
王様ってのは、燕山だよ、あの! 知らないのか?! とんでもないろくでなしだよ。いずれ、李氏朝鮮最悪の暴君なんて呼ばれるのさ。間違いないね!
しかも、べったりくっついてる愛人が、これまたとんでもない性悪女だ。元は妓生……売春婦。
俺は、王には多少は同情する。性格が捻じ曲ったのも無理ないかって思える。だけど、緑水は虫が好かない。いつか俺たちの命取りになる。
孔吉、調子に乗るな。芸人が権力なんか欲しがってどうする??!
だけど、孔吉は、王の寵愛は絶対だと信じてる。緑水と張合って、宮廷を、好き勝手に玩具にする気だ。
孔吉、俺は宮廷を出る。
王の悪政を覆す同志を集める。
革命だ。反乱軍を組織する。
気をつけろ。緑水は何でもするぞ、王の愛を、お前から奪い返すためならば! 孔吉、目をさませ。王は普通じゃない。母親の恨みを晴らす、仇を討つ。それだけで凝り固まって、目が見えない。
怪しい儀式で、母を苦しめた奴らを呪う。ふん。呪われているのはお前だ、燕山!!(青井陽治作成)

※〈爾〉とは、李氏朝鮮時代に王が臣下を敬い呼んだ呼称。劇中では燕山が孔吉を呼ぶ呼称。孔吉は賤民の身でありながら、王から〈爾〉と呼ばれた実在の人物。

王の男

月の家 タルチプ

作=盧炅植(ノ・ギョンシク)
翻訳=宋美幸
演出=矢内文章

盧炅植

1938年、全羅北道南原生まれ。南原農業高校から慶煕大学経済学部に進学、在学中に書いた随筆が国文科の教授の目に留まり、文章を書くことを勧められる。卒業後、ドラマセンター演劇アカデミーを修了。1965年に『渡り鳥』でソウル新聞新春文芸戯曲に当選。その後、出版社に勤めながら執筆活動を続ける。
代表作に『月の家(タルチプ)』(71)、『懲毖録』(75)、『小作地』(79)、『塔』(79)、『鼓』(81)、『井邑詩』(82)、『空ほど遠い国』(85)、『踊るミツバチ』(92)、『ソウルへ行く道』(95)、『千年の風』(99)、『燦爛たる悲しみ』(02)、『反民特委(ソウルの霧)』(05)、『二人の英雄』(07)、『圃隱 鄭夢周』(08)などがある。
2003年には大邱で「盧炅植演劇祭」が開催された。また、「盧炅植戯曲集」も刊行されている。南北問題に関心を持ち、「ソウル平壌演劇祭」推進委員長を務める。著書として歴史小説も書いている。
受賞歴は「百想芸術大賞」戯曲賞(71、82、86)、「韓国演劇芸術賞」(83)、「ソウル演劇祭」大賞(85)、「東亜演劇賞」作品賞(89)、「大山文学賞」(99)、「行願文化賞」(00)、「東朗・柳致眞演劇賞」(03)、「韓国戯曲文学賞」大賞(05)、「ソウル特別市文化賞」(06)、「韓国芸総芸術文化賞」大賞(09)など多数。

『月の家 タルチプ』あらすじ

1951年、小正月の二日前。山里のとある村。ここでは老婆、ソン・ガンナンが次男のチャンボと、孫嫁のスンドク、曾孫の少年と一緒に暮らしている。ガンナンは、軍隊に行った孫のウォンシク(スンドクの夫)が、無事に家へ帰って来ることと、アカになり山に入ってしまったウォンシクの弟、マンシクが早く戻って来ることを願い待っている。しかしチャンボは村長から、甥っ子のマンシクがパルチザンと共に隣村を襲い、警察隊から追撃されたかも知れないという事実を知らされる。
小正月の夕暮れ。ガンナンが二人の孫の健康を祈っている。チャンボはマンシクの亡骸を確認していたが、このことは隠し通そうと心に決める。その夜、ガンナンの家もパルチザンに襲われ、家畜と食糧を奪われた上、チャンボとスンドクは山に連れて行かれる。翌日の明け方、二人は帰って来るが、スンドクは辱めを受けていた。ガンナンは彼女に家を出ることを命ずるが、チャンボはこれを頑なに反対し大喧嘩する。そして堪えきれずに三·一事件の時、ガンナンが侮辱を受けた秘密を暴露し、家を飛び出す。
それから数時間後、ウォンシクが除隊して家に帰って来るが、彼の目は見えなくなっていた。翌朝、打ち明けられるはずのないスンドクは、木の枝に首を吊って自殺する。ガンナンは何があっても揺るがず、急がなくてはならない畑仕事のことを思い、その日に限って朝寝坊した曾孫の名前を、ただ闇雲に呼び続ける。

月の家

 

◯シンポジウム

『日韓演劇交流の歴史』

金正鈺(キム・ジョンオク)/杉本了三

現代日本戯曲リーディングVol.4(ソウル)/2010年

2010年1月21日~24日
文化空間イダ

分館空間イダ

◯リーディング

新宿八犬伝 第一巻 犬の誕生

作=川村毅/翻訳=明眞淑/演出=チェ・ヨンフン

新宿八犬伝 新宿八犬伝

東京原子核クラブ

作=マキノノゾミ/翻訳=李惠貞/演出=李聖悦(イ・ソンヨル)

東京原子核クラブ 東京原子核クラブ

三月の5日間

作=岡田利規/翻訳=石川樹里/演出=成耆雄(ソン・ギウン)

三月の5日間 三月の5日間

◯セミナー
『寺山修司の作品世界』

講師=西堂行人

◯翻訳
毛皮のマリー
作=寺山修司/翻訳=洪善英

うお傳説

作=山崎哲/翻訳=朴泰圭

韓国現代戯曲ドラマリーディング Vol.4

韓国現代戯曲ドラマリーディング4

2009年3月13日~15日
シアタートラム

◯リーディング

凶家

作=李ヘジェ(イ・ヘジェ)
翻訳=木村典子
演出=篠本賢一

出演=岩崎正寛(演劇集団円)/内山厳(フリー)/加藤慶太(東京演劇アンサンブル)/川上直己(ピープルシアター)/秦由香里(演劇集団円)/鈴木絢子(ピープルシアター)/清和竜一(朋友)/手塚祐介(演劇集団円)/中山一朗(フリー)/中山昇(フリー)/福井裕子(演劇集団円)/ 伏見嘉将(朋友)/松熊つる松(青年座)/ミョンジュ(フリー)/横尾香代子(演劇集団円)

作=李ヘジェ

1971年、慶尚南道釜山生まれ。釜山南高等学校を卒業し東国大学に進学するが、演劇を志し故郷・釜山のカマゴル小劇場で演劇活動を始める。93年、再びソウルに行き、〈ウリ演劇研究所〉に所属、作家としてカントルの『死の教室』などの再構成に関わるが、九四年からフリーとなり本格的な作家活動に入る。95年、初戯曲『曲馬団物語』を発表、その後、『花畑』(96)、『詩劇 凶家(原題・凶家に光よ射せ)』(99)などを経て、2000年に同郷の俳優たちと劇団〈蜃気楼万華鏡〉を旗揚げ、活動領域を演出にも広げる。2001年~06年は演劇実験室〈恵化洞一番地〉の第三期同人となり、独自の演劇的世界を構築するとともに、『風の国』(01)、『ロミオとジュリエット』(02)、『マジック・カーペット・ライド』(05)など、ミュージカル脚本も手がける。また、2002年の〈日韓舞台芸術コラボレーションフェスティバル〉に『水漬く屍』で参加し、『出撃』(作=鐘下辰男、演出=鵜山仁)と競演。2008年には三谷幸喜『笑の大学』を演出。
2000年〈明日を開く作家〉(韓国文化芸術振興院)に選定、2005年〈今年の若い芸術家賞〉受賞。他の代表作に、『世紀初期怪奇伝記』(00)、『薛公瓚傳』(03)、『ストーリーキング捜索本部』(04)、『津波』(05)、『六分の戮』(05)、『象とわたし』(07)、『タリフォーン・モダンガール』(07)などがある。

『凶家』あらすじ

ある夜パブクスンは、自身も知らぬ間にふらふらと、三〇年前に住み込み奉公をしていた南長者の家を訪れる。荒れ果て、今は誰も住む者もない凶家となったこの家で、パブクスンはひどい過去を回想し、自殺を試みる。その時、大門鬼神となった南長者があらわれる。南長者はどうして家が没落したのか、その理由をパブクスンに問いただし、二人は賭けをする。賭けは、家神のふりをして家にとりつく雑神たちに、彼らがすでに死んでいることを教えてやること。しかも条件が三つ。言葉で死んだことは教えてはいけない、南長者を巻き込んではいけない、朝まで生きていなければならない。この賭けに負ければ、パブクスンを生きる屍にしてやるというのだ。まもなく、次々にあらわれる雑鬼たち。よく見るとかつて一緒にこの家で暮らした人々だ。三〇年前のある日、その日とまったく同じに行動する彼らを見て、驚くパブクスン。そして、奇妙にもつれ合う事情で死んでいった彼らのあの夜が再び繰り広げられる。

凶家

こんな歌

作=鄭福根(チョン・ボックン)
翻訳=石川樹里
演出=堀江ひろゆき

出演=笠河英雄(コズミックシアター)/金子順子(コズミックシアター)/清原正次(劇団大阪)/堂崎茂男(劇団潮流)/ 仲里玲央(フリー)/やまみ りんご(コズミックシアター)

作=鄭福根

1946年、忠清北道清州市生まれ。中央大学国文学科四年中退。1974年より劇団架橋の座付作家として本格的に劇作を始め、同劇団の先輩作家であった李康白の勧めで新人劇作家の登竜門である日刊紙の新春文芸に応募し、1976年に東亜日報新春文芸に『キツネ』が当選。以来三十余作の戯曲を執筆し、現在まで創作活動を続けている、韓国を代表する女性劇作家である。主に歴史の荒波に翻弄される人間の苦悩を女性の視点から捉え、過去と現在が混在する濃密な時空間を凝縮された文体で表現している。1994年以降、女性演出家ハン・テスクとコンビを組んで数々の話題作を発表した。
代表作に『台風』(78)、『チッキミ(守り神)』(87)、『毒杯』(88)、『失碑銘』(89)、『隠れた水』(92)、『こんな歌』(94)、『チェロ』(94)、『徳恵翁主』(95) 、『世宗32年』(96)、『私、キム・スイム』(97)、『羅雲奎――夢のアリラン』(99)、『ベ・ジャンファ、べ・ホンリョン』(01)、『荷』(07)などがある。1989年『失碑銘』で韓国百想芸術大賞戯曲賞、1994年『こんな歌』でソウル演劇祭戯曲賞を受賞、1997年ヨンヒ演劇賞、2008年『荷』で大山文学賞戯曲部門を受賞。

『こんな歌』あらすじ

ヨンオクは韓国の伝統衣装であるチマ・チョゴリの仕立て職人である。彼女は作業場で、一人ミシンの前に座り、チマ・チョゴリを仕立てている。彼女は幻聴に苦しめられ、過去を回想する。彼女の家は、代々裕福だった。しかし日本の植民地時代に親日家だった彼女の父親が、北朝鮮の人民軍に殺されて以来、家運が傾いてしまった。俗に言う裕福な暮らしを夢みていたヨンオクは、一流大学出身であるにもかかわらず、田舎で教師生活を送る夫に不満を持つ。彼女は、あらゆる方法を使って、夫のインスを国会議員にしようとする。結局、進歩政党に入党したインスは、でっちあげのスパイ容疑で逮捕される。夫を釈放させるために、ヨンオクは警察の口車に乗せられ、インスをスパイとして密告する。しかし検察は彼女との約束を裏切り、インスは死刑にされる。夫を告発し、死に至らせたヨンオクと息子ギョンフンは村を追われ、苦しい生活を強いられる なんとか大学院を出たギョンフンは、工場に就職し、労働組合に入って賃金闘争をはじめる。息子を労働組合から脱退させるため、ヨンオクは労組のアジトを警察に密告する。ところが、これを知ったギョンフンは、その場所に駆けつけ、焼身自殺をしてしまう。自分の愚かさに気付き、絶望に陥ったヨンオクは、夫と息子の幻影に苦しみ、部屋に火を放つ。

統一エクスプレス

作=呉泰栄(オ・テヨン)
翻訳=津川泉
演出=中村哮夫

出演=荒川大三郎(演劇集団円)/石坂重二(フリー)/伊藤克(東京演劇アンサンブル)/籠嶋徹也(ピープルシアター)/鬼頭典子(文学座)/二宮聡(ピープルシアター)/野口仁志(ピープルシアター)

作=呉泰栄

1948年ソウル生まれ。1974年ソウル芸大演劇科卒業。同年『歩行練習』が中央日報新春文芸戯曲部門当選。1979年韓国戯曲作家協会賞、1980年代は劇団76で活動。1987年戯曲集『風の前に灯をかかげ』出版。同年「戦争」で第32回現代文学戯曲部門受賞。アウトサイダー的視点から数々の社会諷刺劇を発表。88年『売春』は公演倫理委員会の公演不可判定が出たが敢行。公演事前審議制度廃止の端緒となった。以来、10年近く断筆。久々に発表したのが1999年『統一エクスプレス』。2000年『豚の脂身』、2001年『燃えるソファ』、2002年『きな粉』と立て続けに統一演劇シリーズ四本を発表、作風の大きな転換点となった。2003年『車輪』、2004年『ホテル フェニクスで眠りたい』、2006年『禅』、2008年創作戯曲活性化支援事業選定作品『おだやかな埋葬』は、ピンターの初期作品に触発され「従来の劇作法から脱皮、新しい変化を試みた」作品だという。

『統一エクスプレス』あらすじ

舞台は軍事境界線近くにある飲食店。店を偽装経営するウボと北側の行動隊員カプサンは越境する人々を南北往来秘密通路に案内し通行料を取って大金を儲けている。ウボはオッカという娘を利用している。秘密通路を通り、脱北した彼女はこの秘密通路こそ全国統一の道だと信じ、国境守備隊員たちに体を売って、地雷を掘りだし、秘密通路の安全を確保している。
そんなある日、某財閥会長が牛の群れを追い立てて北朝鮮を訪問し、政府がウボの飲食店のそばに公式往来窓口を開設したため、彼らの商売は閑散となる。ところが、分離体制固着を狙う機関員と武器販売業の財閥が、統一を阻止するために潜水艦などを使って局地戦を挑発しようと陰謀をたくらむ。その結果、商売は再び活気を帯び、彼らは喜々として祝杯を上げる。無邪気に「私たちの願いは統一」という歌を歌うオッカ。公式往来を待ち望む失郷民の老人は、夢に描いた故郷を踏むことができずに死ぬ。

統一エクスプレス

◯シンポジウム

「日韓演劇交流の歴史と末来」

金義卿(キム・ウィギョン)

現代日本戯曲リーディング3(ソウル)

2007年11月29日~12月2日
韓国中央国立劇場

◯リーディング

悔しい女

作=土田英生/翻訳=石川樹里/演出=キム・ドンヒョン

鳩を買う姉妹

作=岩松了/翻訳=李恵貞/演出=パク・グニョン

こんにちは、母さん

作=永井愛/翻訳=木村典子/演出=パク・ジョンヒ

◯翻訳

『Last Show』

作=長塚圭史/翻訳=朴泰圭(パク・テギュ)

『パンドラの鐘』

作=野田秀樹/翻訳=明眞淑(ミョン・ジンスク)

『ヘブンズサイン』

作=松尾スズキ/翻訳=洪善英(ホン・ソニョン)

韓国現代戯曲ドラマリーディングVol.3

韓国現代戯曲ドラマリーディングVol.3

2007年2月2日~4日
シアタートラム

韓国現代戯曲ドラマリーディングVol.3

ドラマリーディング

山火(やまび)

作=車凡錫(チャ・ボムソク)
翻訳=木村典子
演出=石澤秀二

出演
神山寛(俳優座)/土屋美穂子(青年座)/浦吉ゆか(青年劇場)/志村麻里子(テラ・アーツ・ファクトリー) 前田真里衣(民藝)/鶉野樹理(俳優座)/清田直子(フリー)/井口香(テラ・アーツ・ファクトリー)/五味多恵子(青年座) 緒方淑子(青年座)/根岸佳南江(テラ・アーツ・ファクトリー)/高橋浩平(フリー)/武田光太郎(レオコーポレーション) 広戸聡(青年劇場)

作=車凡錫

1924年、全羅南道木浦生まれ。光州師範学校(1945年)ならびに延世大学英語英文科(1966年)を卒業。55年、朝鮮日報新春文芸に戯曲『密酒』が佳作入選、翌年『帰郷』が当選し文壇デビュー。戦後文学の第一世代として、韓国リアリズム演劇の確立に貢献。戦後文学世代ならではの風刺と批判意識の強い作品群は、戦争とその傷痕という問題にとどまることなく、変遷する社会を多様な角度からみつめている。60年代には代表作『山火』をはじめ『鷗の群』『青瓦家』など17作品、70年代には『王教授の職業』『虐殺の森』など21作品、80年代以降は『鶴よ、愛なのだろう』『夢の空』『オクダン』などを発表。また、56年に劇団製作劇会を旗揚げし、小劇場運動を主導。63年、劇団山河創団。清州大学、ソウル芸術専門大学で教鞭をとりながら、大韓民国芸術院会長、韓国文化芸術振興院長を歴任。2006年6月6日、82歳で他界。 朝鮮戦争休戦会談が行われた冬から翌春にかけての、慶尚道と全羅道を隔てる山脈の山あいにある集落。

『山火』あらすじ

里長の梁(ヤン)氏のところへ女たちが集まっている。ほとんどの男たちは殺されたのだ。梁氏の息子で点禮(チョムレ)の夫は、人民軍に捕まる前に逃げたとされ、反動の札をつけられている。いらだつ女たちは、穀物のことや梁氏の息子のことで口論となる。貧しさで生活は荒んでいた。そこへ夜警勤務の命令が下る。この村にアカが逃げ込んだらすぐ通報せよと。もし匿えば連帯責任で村が処罰されることになる。梁氏が夜警当番の晩、点禮の前に怪我をした圭福(ギュボク)が現れる。アカではないという圭福を点禮は竹林に匿う。
3週間後、点禮は竹林に食料を運んでいた。圭福と密会を重ね親密な関係になっている。圭福はアカの友人に連れ回され、いつのまにかアカの札をつけられていた。自首を勧める点禮だが圭福の決心はつかない。村では山にアカが逃げ込んだと噂されていた。竹林から下りてきた点禮を四月(サウォル)が見つける。詰め寄る四月にこっそり圭福のことを告げると、四月は一日交代で圭福の面倒を見ることを提案、点禮は仕方なく承諾する。
早春、四月が寝込んでいる。圭福との子を身籠もったらしい。亭主もいないのに子どもが出来るはずがないと母の崔(チェ)氏は思っている。四月の様子を見に行く点禮。アカを一掃するために山に火を放つという噂もあり、二人は追い詰められる。四月の子どものことは村でも噂になっていた。
竹林を燃やすためにやってきた兵士を必死に止める点禮だが、願いも空しく火が放たれる。やがて圭福が引きずり出され、女たちは四月の家へ押し寄せる。家の中から聞こえた崔氏の悲鳴は、やがて泣き声に変わっていく。その声を聞きつつ、点禮が圭福の手足を揃えてやる。

山火

人類最初のキス

作=高蓮玉(コ・ヨノク)
翻訳=山野内扶
演出=笠井友仁

出演
中山一朗(フリー)/池田勝(フリー)/勝矢(RIKIプロジェクト)/矢内文章(フリー)/高松潤(青年座)/横山晃子(テラ・アーツ・ファクトリー)/菊地誠(フリー)/渡邉力(フリー)/横手ひさお(銅鑼)

作=高蓮玉

1971年ソウル生まれ。94年、釜山東亜大学卒業。同年、釜山MBC児童文学大賞少年小説部門に入賞。時事雑誌記者ならびに放送作家として活動中の96年、釜山日報新春文芸戯曲部門に入賞し、劇作家としてデビュー。99年、釜山市立劇団主催の小劇場フェスティバルで『夢ならいいのに』、埠頭演劇団で『芝居のような人生』(原作=『ヴォイツェック』)など、釜山での活動が中心だったが、01年に金洸甫(キム・カンボ)演出で『人類最初のキス』をソウルで上演。この作品が2001年演劇評論家協会が選ぶベスト3に選ばれ一躍脚光をあびる。03年、再び金洸甫とのコンビで『笑え、墓よ』を上演し、04年の芸術賞演劇部門優秀賞、浦項国際演劇祭最優秀作品賞。06年、『一週間』(演出=朴根亨(パク・グニョン))、『白下士官物語』(演出=ムン・サムファ)を発表、ブレヒトの『肝っ玉おっ母とその子どもたち』の脚色も手がけるなど、旺盛な創作活動をつづけている。

『人類最初のキス』あらすじ

人里はなれた山奥にある青松(チョンソン)監護所の一般房に、元タクシー運転手のハクス、この部屋の班長トンパル、イエス信者のソンマン、入所間もないやくざのサンベクが暮らしている。
ハクスの仮釈放の決定を下す社会保護委員会が開かれ、判事・検事・心理学者・精神科医の審査が始まる。反省を述べるハクスに対し、検事は危険な男だと言い、心理学者は極悪非道な犯罪者の典型的な顔だと説明しつづけている。医師はそれに対し時代錯誤と反論するも、結局保護観察延長3年が言い渡される。判決を聞き狂いだしていくハクスを興味深くみながら判事は5年、7年とさらに延長する。ハクスから理性の色が消えはじめる。ある日の早朝、ハクスが食べていたものは自分の糞だった。
ソンマンの懺悔文が評価され、仮釈放の社会保護委員会が特別に開かれた。ソンマンはまるで救世主イエスのような神々しい姿で、逆に危険人物とみなされ、仮釈放は棄却される。暴れたソンマンは教導官に銃殺される。残された三人の前に亡霊となって現れ、こちらは幸せな場所だと死の世界に誘う。ハクスは静かに息絶える。
サンベクのところへ教導官が来る。長い間の顔見知りだ。教導官は一生を塀の中で暮らす俺たちは似たり寄ったりだと言い、サンベクもそれに同意する一方で、私は人殺しの悪人だと言い、教導官を絶望させる。
トンパルの社会保護委員会が開かれた。外へ出る意思がないトンパルを理解できない判事たち。その時、外が騒がしくなる。一人の受刑者がトイレで首をくくったことが知らされる。トンパルはサンベクだと直感する。判事は満65歳以上は無条件仮釈放となる判決を出すが、トンパルはそれを拒む。空に向かって話すトンパル。「俺も連れて行けよな。いっしょに行こうぜ。」

人類最初のキス

0.917

作=李鉉和(イ・ヒョナ)
翻訳=鄭大成
演出=中野志朗

出演
二宮聡(ピープルシアター)/髙橋幸子(青年座)/松熊つる松(青年座)/城全能成(文学座)

作=李鉉和

1943年、黄海道載寧生まれ。67年、延世大学英文科卒業。93年、延世大学言論情報大学院新聞放送高位課程修了。70~01年までKBSテレビに勤務。70年、「中央日報」新春文芸に『ヨハネを捜します』で入選し、76年、「中央日報」創刊10周年記念公募に『シーシーシーッ』が入賞、金正鈺(キム・ジョンオク)演出で自由劇場が上演。77年「文学思想」新人作品賞、78年ソウル劇評家グループ賞、韓国演劇映画芸術賞、79年「現代文学」賞、84年大韓民国文学賞、87年大韓民国演劇祭戯曲賞、88年東亜演劇賞、百想芸術大賞、98年キリスト教文化大賞など受賞多数。
75~80年、民衆劇場『どなたですか?』がロングラン。『カデンツァ』(78)、『0.917』(81)で劇作家としての地歩を固め、『サンシッキム』(81)、『不可不可』(82年)などで、抑圧された人間存在の悩める魂の深奥をさらに追及した。〈残酷演劇〉という面ではアントナン・アルトーとの、風刺的想像力の楽しみ・不条理劇という面では朴祚烈(パク・ジョヨル)やピンターとの、共通性で語られることもあり、現代韓国におけるポストモダン劇の急先鋒である。

『0.917』あらすじ

ある雨のふる夜、中年の男が一人、宿直室で無聊な時を過ごしている。
そこに、雨にびっしょり濡れた一人の少女が飛びこんでくる。男は少女を家に帰そうとする。が、少女は男の言うことをきかず、体で男を誘惑し、中年になるまで、何をし、何のために生きてきたのかと、男を厳しく問い詰める。50代後半での惨めな定年退職を考えたら、挫折して当然ではないかと。
そこに、夜食のサンドウィッチを持って、男の妻が現れる。男はあわてて少女をソファの後ろに隠す。しかし、これまでのことはすべて男の幻想だった。いつの間にか現実の世界に戻った男の耳に、少女の笑い声が響く。汽笛よりも大きく、その笑い声は男をあざ笑う。
さて、所かわって、さっきの男の妻か。たしかに話は繋がっているのだが、違う女だという設定で女A。マンションに帰って明かりをつけると、闇の中で少年がうずくまっていたので驚く。
家に帰そうとするが、黙ってばかりいて、なかなか帰らない。そのうち女Aは少年に同情してしまう。亭主の食べなかったサンドイッチを少年に食べさせた後、だんだん気を許してしまう。
少年は顔色を窺いながら、いつのまにか女Aの乳房に手をやっている。そして彼女にワインを勧める。しらずしらず彼女は興奮してくる。その瞬間、少年ははじめて声を発し、肉体派サディストに変身。ワインを胸にたらして女Aに飲ませ始める……。
そして最後の場所は、少年A・少女Aの登場するアジト。帰ってきた彼らの謎めいた会話。あたかも妖怪人間のごとく、「早く成人になりたい」という彼らは何を表しているのか。
「幕」という語を廃し、登場人物につけられる「A」という記号。物語を拒否しつつ、無数に累乗されるストーリー。

0.917

離婚の条件

尹大星(ユン・デソン)
翻訳=津川泉
演出=森井睦

出演
青木勇二(FMG)/井口恭子(青年座映画放送)/伊東知香(ピープルシアター)/久野歩(フリー)/籠嶋徹也(ピープルシアター)/佐野美幸(青年座)

作=尹大星

1939年咸鏡北道會寧生まれ。61年延世大学校法学科卒業。64年ドラマセンター演劇アカデミー修了(現・ソウル芸術大学)。67年東亜日報新春文芸戯曲部門に『出発』が当選。銀行員生活をしながら戯曲を書いていたが、70年銀行を辞め、本格的作家活動開始。73~80年劇作の傍らMBC専属作家として『捜査班長』などテレビドラマを執筆。80年からソウル芸大劇作科で教鞭をとり、04年退官。同年『尹大星戯曲選集』全4巻刊行。
2000年23回東朗・柳致眞演劇賞、韓国演劇映画芸術賞(2回)、東亜演劇賞、現代文学賞、大韓民国演劇祭戯曲賞、大韓民国放送大賞脚本賞、韓国演劇芸術賞、大統領表彰、国民褒章などを受賞。
主な作品に『マンナニ(ならず者)』『奴婢文書』『出世記』『男寺党の空』『SARS家族』『明洞ブルース』『清渓川(チョンゲチョン)』。韓国の伝統的仮面劇などの民俗的要素を加味した作品や、青少年のための作品、『離婚の条件』に代表されるアクチュアルで社会性濃厚な写実主義的作品がある。

『離婚の条件』あらすじ

90年代半ば頃から20年以上連れ添った中高年の「熟年離婚」が韓国でも増え、「黄昏離婚」という名でマスコミ報道されるようになった。『離婚の条件』は、熟年夫婦の危機と波紋をリアルに描く。
コピーライターの夫は、アイディアの創出に四苦八苦していた。コーヒーの宣伝コピーがままならないのだ。そんなある日CF撮影現場で在日同胞出身のモデル、30代初めのユミに出会い、互いに惹かれあう。
娘の結婚の3日前、妻が夫に突然離婚を宣言。実は25年の間、着々と離婚準備を進めてきた。ことあるごとにアドバイスしてきた主治医崔博士も困惑するばかり。その晩、婚約者ハンが娘エラを訪ねて突然、婚約破棄を申し出る。夫は婚約破棄に賛成する。泥酔したハンはエラの部屋に泊まり、枕を共にする。深夜、エラと愛しあって自信を取り戻したハンは破棄を撤回。ハンが帰っていくと、夫人が恋人がいると告白。夫は家を出て行く。
数ヶ月後、夫は散らかり放題の部屋で腰痛に苦しんでいた。訪ねてきたユミが、いつものように腰に脚を絡ませて抱きついた拍子に腰痛が奇跡的に治る。二人は一緒に暮らしはじめる。
ひと月後。部屋からユミがかばんを持って出ていこうとする。と、夫が帰ってくる。夫の言い訳もむなしく、ユミは出て行く。夫ははじめて、「生きるとは何か?」という人生の意味に対する根源的問いに直面する。そして妻に電話する。だが、妻の名が思い出せない。世界が壊れた彼の眼前には、幻影のように現れる夫人、博士、娘夫婦、ユミ。
夫の子供を妊娠したユミは自立して子供を育てるという。「残った人生でオレの役割は?」とつぶやく夫。崔博士が答える。「死の安息が待っている」と。その時、ようやく人生の真実に開眼した彼に、行き詰まっていた広告コピーのアイディアが閃く。

離婚の条件

呉将軍の足の爪

作=朴祚烈(パク・ジョヨル)
翻訳=石川樹里
演出=鄭義信

出演
下総源太朗(ワンダー・プロダクション)/服部良次(黒テント)/南谷朝子(青年座映画放送)/朱源実(ケイファクトリー)/柴田次郎(マックス・プロモート)/紫竹芳之(フリー)/佐藤秀嗣(フリー)

作曲=萩京子

作=朴祚烈

1930年、咸鏡南道咸州郡生まれ。咸興高級中学校卒業後、北朝鮮で一年半あまり中学校の文学教員を勤める。1950年、朝鮮戦争のさなかに南に渡る。その後12年間、韓国陸軍服務。63年、ドラマセンター演劇アカデミー研究課程(現ソウル芸術大学)に入学し、戯曲・ドラマ脚本の執筆を始め、63年10月、処女作『観光地帯』を発表。65年、『ウサギと猟師』で東亜演劇賞受賞。66年、劇団自由の旗揚げに参加。73年、呂石基(ヨ・ソッキ)教授とともに、韓国劇作ワークショップを開設。81年、ドラマドキュメンタリー『大地の息子』で大韓民国放送大賞受賞。86年以後、創作活動を中断し、演劇上演に対する事前検閲制度の廃止運動を主導。88年、『呉将軍の足の爪』で百想芸術大賞受賞。現在、韓国芸術総合学校演劇院客員教授。大韓民国芸術院(アカデミー)会員。ほかの代表作に『首の長い二人の対話』、『シロの訪問』、『曺晩植は生きているか』ほか。ラジオドラマ・テレビドラマ多数。

『呉将軍の足の爪』あらすじ

貧しい小作人の一人息子として生まれた呉将軍は、おっ母とモクセ(牛)と日々のどかに暮らしていた。ある日、将軍のもとに召集令状が届く。将軍は恋人コップンに知らせに行き、入隊する前にと結ばれる二人。
訓練所に入った呉将軍二等兵は、訓練中に腰が抜けたり、隊から無断離脱したりと、問題ばかり起こしている。しかし戦況は厳しく、訓練期間を短縮して前線に送られることになる。前線に送られる前夜、遺体が見つからない場合に備え、髪の毛と爪を切るよう命じられる。
一方、村にもしょっちゅう戦闘機が飛んでくるようになった頃、おっ母のもとに再び召集令状が届く。同じ村に「呉将軍」という同姓同名の青年が二人いて、前に受け取った召集令状は他人のものだったのだ。おっ母とコップンは慌てて郵政省や軍に嘆願に行くが、たらい回しにされるばかり。そんなことはつゆ知らず、前線に向かう呉将軍。
一方、前線では軍事会議が開かれている。司令官は敵の攻撃をかわすため、敵軍にニセの情報を流す逆情報工作を企む。司令官は、肩を揉みにきた呉将軍の純粋無垢な態度に目をつけ、彼にニセ情報を与え、敵の捕虜になるように仕向ける。
前線に置き去りにされた将軍は、敵に見つかり捕虜にされる。まさにその時、逮捕状を持った憲兵が現れ、他人の召集令状で入隊した呉将軍の引渡しを司令官に要求する。しかし、すでに遅し。
敵軍の捕虜となった将軍は拷問され、ニセの情報を敵軍に漏らす。ニセの情報を信じ、攻撃のチャンスを逃した敵軍は、将軍が逆情報の工作員であったことを知り、処刑を執行する。将軍は最期まで何も知らぬまま、ただ一言「おっ母、コップン、モクセ」と叫び、銃殺される。敵軍の司令官は最期まで無知な百姓を演じ通した将軍の“名演技”に感嘆する。
おっ母、コップン、モクセのもとに、前線に行く前に切った髪の毛と爪が入った箱が届けられ、将軍の勇壮な戦死が伝えられる。
本作品は1974年に執筆されたが、軍を風刺した内容のため上演禁止処分を受け、1988年に初演された。

呉将軍の足の爪

シンポジウム

韓国の近代劇の始まり

パネリスト
呂石基(ヨ・ソッキ)
林英雄(イム・ヨンウン)
司会=大笹吉雄


主催=日韓演劇交流センター
共催=世田谷パブリックシアター
平成18年度文化庁芸術団体人材育成支援事業

現代日本戯曲リーディングVol.2(ソウル)

2005年11月17日~20日
韓国中央国立劇場

◯リーディング

 『杏仁豆腐のココロ』

作=鄭義信/翻訳=李惠貞/演出=奇國敍(キ・クッソ)

杏仁豆腐のココロ

『泥人魚』

作=唐十郎/翻訳=高晶恩(コ・ジョンウン)/演出=呉泰錫

泥人魚

『木に花咲く』

作=別役実/翻訳=石川樹里/演出=李潤澤

木に花咲く

シンポジウム
『日韓の現代戯曲の現在』

発表者=金潤哲(キム・ユンチョル)・扇田昭彦・李康白(イ・ガンベク)・別役実
司会=林英雄 (イム・ヨンウン)
討論者=金大鉉(キム・デヒョン)・大笹吉雄・西堂行人

韓国現代戯曲ドラマリーディングVol.2

韓国現代戯曲ドラマリーディングVol.2

2005年2月18日~20日
シアタートラム

(プロフィール等は上演時のものです)

韓国現代戯曲ドラマリーディングVol.2

自転車

作=呉泰錫(オ・テソク)
翻訳=木村典子
演出=石澤秀二

出演
井上昭子(青年劇場)/益富信孝(青年座)/ 根岸佳南江 (テラ・アーツ・ファクトリー)/ 小島敏彦(朋友)/武田光太郎 (レオコーポレーション)/ 嶋隆静(フリー)

作=呉 泰錫

1940年生。64年、延世大学哲学科卒業。劇作家として68年『換節記』、73年『草墳』、74年『胎』、80年『山茱萸』、83年『自転車』などを韓国演劇史に残る演出家たちが競って上演。84年に劇団木花を旗揚げして以来、演出家として自身の作品を上演している。代表作に『春風の妻』『父子有情』『白馬河の月の夜に』『コソボ、そして流浪』『I LOVE DMZ』他。現在、ソウル芸術大学劇作科教授を務めながら、専用劇場アルングジで一年の半分以上公演をおこなう。

『自転車』あらすじ

朝鮮戦争の時代に焼き殺された村人127名の命日に、村役場に務めるユン書記は理由もなく意識不明となり、42日間職場を欠勤する。欠勤届けを書こうにもその理由がわからない。彼は同僚のク書記と共に、その日の足取りを追う。……農高の同窓生を無免許医療で告発し、帰宅途中に酒を飲む。自転車を押しながら深夜の帰り道、ガチョウの家と呼ばれるハン家の前で、次女が家出したと主人がうろついている。妹を追い出したのは自分だと長女は言うが、その理由が釈然としない。どうもこの家の子供たちは、ソルメのハンセン病患者の家から養子に出されたらしい。彼はソルメに自転車を向ける。しかしそこでは何もわからない。しばらく行くと水死した祖父の友人の漢方医と会う。この漢方医も焼死した一人だ。石橋の下の蟹捕りの所では、醸造所のファン氏があばれ牛にやられたとやって来る。シントルメのコルチェンイまで来た時、ハン氏の次女が自転車に飛び乗った。墓地に隠れていたという。自転車の前にロウソクを立て、ハン氏の家に連れ帰ろうとした時、女の声が聞こえる。とっさにロウソクの灯りを消す。すると闇の中から牛が突進してくる。そして、意識を失う。……すっぽり記憶から抜けていた事件があった。ソルメの夫婦の家に炎が上がり、その現場に向っていたのだ。そこで彼が見たのは、炎の中のソルメの妻、それに重なるように、かつて死んでいった村人たちの姿だった。

自転車

鳥たちは横断歩道を渡らない

作=金明和(キム・ミョンファ)
翻訳=石川樹里
演出=ふじたあさや

出演
綾香詳三(京楽座) /西村剛士(京楽座)/ 松田光輝(京楽座)/こやまあつこ(朋友)/釈種サヤカ(朋友)/清和竜一(朋友)/菊地誠(フリー)/丸山詠二(フリー)/武藤アサ子(フリー)

作=金 明和

1966年生。88年梨花女子大学教育心理学科卒業。94年、評論家としてデビュー。劇作では97年に『鳥たちは横断歩道を渡らない』で三星文学賞戯曲部門を受賞。00年『オイディプス、それは人間』、01年『チェロとケチャップ』と連続で韓国演劇協会選定のベスト5となる。01年『トルナル(一歳の誕生日)』では韓国演劇評論家協会「今年のベスト3」と東亜演劇賞を受賞。02年、平田オリザとの合作『その河をこえて、五月』で第二回朝日舞台芸術賞グランプリ受賞。

『鳥たちは横断歩道を渡らない』あらすじ

交通事故で怪我をしたスンジェの代わりに演出をしてくれないかと演劇部の後輩に頼まれたジファン。はじめは断るが、結局演出を引き受ける。久しぶりのサークルルームに、仲間たちと過ごした日々が甦る。学生時代を送った80年代は軍事政権下、学生運動が盛んだった。仲間たちもデモや学習会にのめり込み、誰もが未来を信じて戦った。現役の後輩たちは、政治や社会には無関心、個人の欲望や快楽に率直でジファンは戸惑いを覚える。公演の演目は決まったが、反抗的なソンテやゲイのヒスなどはジファンに敵意があり、稽古はうまくいかない。そんなある日、連絡もなく稽古に遅れてきたソンテと衝突し、ソンテは稽古に来なくなる。入院中のスンジェを見舞ったジファンは、ソンテが演劇部の仲間だったギュテの弟だと知る。ジファンの恋人は民主化を訴えるために焼身自殺を計画、知りながら止めなかったギュテをジファンはいまだに許せない。しかし、ギュテ自身も警察の拷問で発狂し、今は精神病院に入院中だ。ギュテの弟であるソンテを見放すなとスンジェは忠告する。ソンテの居場所を突き止めたジファンは、欲望渦巻くいかがわしい酒場に足を踏み入れて連れ戻し稽古を再開する。しかし、ヒスが吃りで、稽古は進展しないし、ソンテは相変らず反抗的だ。朝、ヒスが一人で稽古をしていた。ヒスは、自分が同性愛者であることを父に告白できる日が来るだろうかと打ち明ける。

鳥たちは横断歩道を渡らない

豚とオートバイ

作=李萬喜(イ・マニ)
翻訳=熊谷対世志
演出=鐘下辰男

出演
大鷹明良 (アルファエージェンシー)/渡辺美佐子(岩淵ぐるうぷ)/ 西山水木(M・M・P)/占部房子(小野事務所)/小林勝也(文学座)

作=李 萬喜

1954年生。78年東國大学印度哲学科卒業。光州市内で小劇場を始め、処女戯曲『処女飛行』発表。90年『それは木魚の穴の底の小さな闇でした』で三星文芸賞、ソウル演劇祭大賞、戯曲賞、白想芸術大賞戯曲賞受賞。92年開始の『電気、チョッと消して下さい』は1000回を越えるロングランとなった。96年『治ってから出て行け』で東亜演劇賞戯曲賞。97年発表『辰年の上に戌年』は現在までロングランを続けている。

『豚とオートバイ』あらすじ

孤児ながら、苦労して英語教師になった黄載奎は結婚して幸せに生活していたが、一つ目で額に口がある奇形児が生まれ、苦悶の末、その子を殺してしまう。やがて下獄した彼を待っていたのは、妻が、病身の母を抱えつつ不倫に走り、その事に耐え切れず自殺したという報せだった。彼女は詩ともつかない走り書きを遺していた。「何日か前に初めて悟りました。始まりというのは、我々が何気なく口にした言葉と行動から始められたという事を。言葉の大切さを思い知って行きました。」  出獄後、予備校講師となった載奎は、かつての教え子である慶淑と暮らしている。高校教師だった載奎に猛烈なアタックを仕掛けた向こう見ずな少女だった慶淑は、今は医大を出て専門医の道を進む立派の大人の女性であり、犯罪者であった載奎を、昔と変わらずに、あるいはそれ以上に愛しており、年の離れた「元犯罪者」との結婚に反対する親と三年も闘い続けている。人生の全てにとまどっている載奎は、慶淑との結婚話にも迷う。それどころかこの結婚話が、彼に自分の来し方を思い巡らせてしまう。観客、或いは死んだ妻に語りかける載奎。それは彼の苦行のような人生を回想させ、それが彼を更に悩ませる。獄中、子殺し、裁判、慶淑との出会いといった様々な回想の中で、載奎はようやく「始めの一歩」を踏み出す覚悟ができてくる。

豚とオートバイ

エビ大王

作=洪元基(ホン・ウォンギ)
翻訳=馬政熙
演出=木村真悟

出演
山内栄治(池袋小劇場)/鳥山昌克(唐組)/大貫誉(新宿梁山泊)/コビヤマ洋一(新宿梁山泊)/近童弐吉(ワンダープロ)/近藤結宥花(新宿梁山泊)/松岡哲永(新宿梁山泊)/星野和香子 (ストアハウスカンパニー)/井口香 (テラ・アーツ・ファクトリー)/中村万里(フリー)/南谷朝子(青年座映画放送)

作=洪元基

1959年生。ソウル芸術専門大学を卒業。84年呉泰錫率いる劇団木花に入団し、俳優兼作家として活躍。89年『アスファルト』で韓国日報新春文芸に当選。02年発表の『エビ大王』でソウル公演芸術祭の戯曲賞・作品賞他を独占。代表作に『本物の新派劇』『高句麗ブルース』『スフィンクス—ソウル版オイディプス—』『石持(いしもち)は美味い』等がある。

『エビ大王』あらすじ

時代は古朝鮮のある時、青銅器から鉄器に移ろうとしている時代、神話と歴史が共存していた時期、政治と宗教が分離されていく時期。世継ぎとなる息子を欲していたエビ大王は、女ばかりしか生まれない事に業を煮やし、最後に生まれた娘を川に捨ててしまう。ある日、来世からの二人の使者が現れ、寿命が尽きたことをエビ大王に告げる。しかし大王は息子をもうけるまで死ねないと懇願する。使者たちは猶予の時間を大王に与えるが、そのかわり一日三十人の民を殺さなければならぬ事を彼に告げる。大王は多少の動揺を見せるが承諾する。息子を作るため三千人の宮女たちと産土神宮に籠り、長女の夫と次女の夫に政務を任せるが、派閥を形成して対立していく。使者たちは王にこう告げる。「父に捨てられ、夫に捨てられ、息子に捨てられる運命の女があなたの息子を産める」と。早速、娘の捜索を部下に命じる。捨てられた娘・パリデギは無事に成長していたが、育ての母が病気のため、わずか三俵の米で身を売る事になる。売られて嫁にいったパルド(八道)の家は焼かれ、パルドの八番目の息子と結ばれたパリデギは男を産む。予言は成就されるが、パリデギは自分の六番目の姉に夫を奪われ、息子にも去られてしまう。パリデギは産土神宮に招き入れられ、危うく父王と関係を結びそうになる。親子は再会するが、王は自らの罪の重さを悟り、「私を殺せ」と部下に命じる。

エビ大王

真如極楽 こころとかたち

作=李康白(イ・カンベク)
翻訳=津川泉
演出=森井睦

出演
豊田茂(青年座)/神山寛(俳優座)/二宮聡(ピープルシアター)/中山一朗(フリー)/堀江真理子(フリー)

作=李康白

1947年生。71年東亜日報新春文芸に戯曲『五』当選登壇。ヨンヒ演劇賞(75)、東亜演劇賞(82)、ソウル劇評家グループ賞(83)、韓国演劇芸術賞(94)、大山(テサン)文学賞(96)ソウル演劇祭戯曲賞(98)百想芸術大賞戯曲賞(01)等受賞多数。98年~02年韓国芸術総合学校演劇院劇作科教授。現在、ソウル芸術大学劇作科教授。代表作に『野原にて』(中学国定教科書所収)『七山里』『春の日』ほか。

『真如極楽 こころとかたち』あらすじ

名仏師ハム・ミョジンには二人の高弟がいた。仏像の完璧な「かたち」を追究するトンヨン。仏の「こころ」が入らなければ無意味と考えるソヨン。そして二人を兄のように慕って育ったハム・ミョジンの一人娘ハム・イジョン。ソヨンは煩悶の末、「かたち」に懐疑を抱き、仏のこころを探す旅に出る。その間、トンヨンはハム・イジョンの体を奪い結婚する。ハム・ミョジンは老いて体調が悪化、トンヨンを後継者に選ぶ。やがて、息子誕生。たまたま工房に立ち寄ったソヨンは二人の結婚を知り、再び遍歴放浪の旅に出る。十数年後、あれこれ小言を言う車椅子のハム・ミョジンを出入禁止にするトンヨン。ある日、ハム・ミョジンは倒れた仏像の下敷きとなって死ぬ。娘のハム・イジョンは父の幻影を見るほど動揺する。トンヨンは妻に自分の作った仏像に三千回礼拝することを命じる。彼女はそれを途中で投げ出し、ソヨンを探しに家を出る。そして野末で乞食のような姿をしたソヨンに出会う。ソヨンがつくる「かたち」にこだわらない石仏が近隣の人々の信仰を集めているのを知り、彼女も行を共にする。精神的な父ソヨンと実父トンヨンがいつも胸中で争い葛藤していた息子チョ・スンインは、仏師となることを願う父の希望に抗い音楽家となり、二人の「父」の不協和音を音楽で調和させようと決心する。音と沈黙、「かたち」と「こころ」が調和した境地、「極楽」という世界観が明らかにされる。

真如極楽

シンポジウム
戯曲と上演

パネリスト
呉泰錫
李康白
ふじたあさや
司会=西堂行人

主催/日韓演劇交流センター◇ 共催/世田谷パブリックシアター
平成16年度芸術団体人材育成支援事業