韓国現代戯曲ドラマリーディング Vol.4

韓国現代戯曲ドラマリーディング4

2009年3月13日~15日
シアタートラム

◯リーディング

凶家

作=李ヘジェ(イ・ヘジェ)
翻訳=木村典子
演出=篠本賢一

出演=岩崎正寛(演劇集団円)/内山厳(フリー)/加藤慶太(東京演劇アンサンブル)/川上直己(ピープルシアター)/秦由香里(演劇集団円)/鈴木絢子(ピープルシアター)/清和竜一(朋友)/手塚祐介(演劇集団円)/中山一朗(フリー)/中山昇(フリー)/福井裕子(演劇集団円)/ 伏見嘉将(朋友)/松熊つる松(青年座)/ミョンジュ(フリー)/横尾香代子(演劇集団円)

作=李ヘジェ

1971年、慶尚南道釜山生まれ。釜山南高等学校を卒業し東国大学に進学するが、演劇を志し故郷・釜山のカマゴル小劇場で演劇活動を始める。93年、再びソウルに行き、〈ウリ演劇研究所〉に所属、作家としてカントルの『死の教室』などの再構成に関わるが、九四年からフリーとなり本格的な作家活動に入る。95年、初戯曲『曲馬団物語』を発表、その後、『花畑』(96)、『詩劇 凶家(原題・凶家に光よ射せ)』(99)などを経て、2000年に同郷の俳優たちと劇団〈蜃気楼万華鏡〉を旗揚げ、活動領域を演出にも広げる。2001年~06年は演劇実験室〈恵化洞一番地〉の第三期同人となり、独自の演劇的世界を構築するとともに、『風の国』(01)、『ロミオとジュリエット』(02)、『マジック・カーペット・ライド』(05)など、ミュージカル脚本も手がける。また、2002年の〈日韓舞台芸術コラボレーションフェスティバル〉に『水漬く屍』で参加し、『出撃』(作=鐘下辰男、演出=鵜山仁)と競演。2008年には三谷幸喜『笑の大学』を演出。
2000年〈明日を開く作家〉(韓国文化芸術振興院)に選定、2005年〈今年の若い芸術家賞〉受賞。他の代表作に、『世紀初期怪奇伝記』(00)、『薛公瓚傳』(03)、『ストーリーキング捜索本部』(04)、『津波』(05)、『六分の戮』(05)、『象とわたし』(07)、『タリフォーン・モダンガール』(07)などがある。

『凶家』あらすじ

ある夜パブクスンは、自身も知らぬ間にふらふらと、三〇年前に住み込み奉公をしていた南長者の家を訪れる。荒れ果て、今は誰も住む者もない凶家となったこの家で、パブクスンはひどい過去を回想し、自殺を試みる。その時、大門鬼神となった南長者があらわれる。南長者はどうして家が没落したのか、その理由をパブクスンに問いただし、二人は賭けをする。賭けは、家神のふりをして家にとりつく雑神たちに、彼らがすでに死んでいることを教えてやること。しかも条件が三つ。言葉で死んだことは教えてはいけない、南長者を巻き込んではいけない、朝まで生きていなければならない。この賭けに負ければ、パブクスンを生きる屍にしてやるというのだ。まもなく、次々にあらわれる雑鬼たち。よく見るとかつて一緒にこの家で暮らした人々だ。三〇年前のある日、その日とまったく同じに行動する彼らを見て、驚くパブクスン。そして、奇妙にもつれ合う事情で死んでいった彼らのあの夜が再び繰り広げられる。

凶家

こんな歌

作=鄭福根(チョン・ボックン)
翻訳=石川樹里
演出=堀江ひろゆき

出演=笠河英雄(コズミックシアター)/金子順子(コズミックシアター)/清原正次(劇団大阪)/堂崎茂男(劇団潮流)/ 仲里玲央(フリー)/やまみ りんご(コズミックシアター)

作=鄭福根

1946年、忠清北道清州市生まれ。中央大学国文学科四年中退。1974年より劇団架橋の座付作家として本格的に劇作を始め、同劇団の先輩作家であった李康白の勧めで新人劇作家の登竜門である日刊紙の新春文芸に応募し、1976年に東亜日報新春文芸に『キツネ』が当選。以来三十余作の戯曲を執筆し、現在まで創作活動を続けている、韓国を代表する女性劇作家である。主に歴史の荒波に翻弄される人間の苦悩を女性の視点から捉え、過去と現在が混在する濃密な時空間を凝縮された文体で表現している。1994年以降、女性演出家ハン・テスクとコンビを組んで数々の話題作を発表した。
代表作に『台風』(78)、『チッキミ(守り神)』(87)、『毒杯』(88)、『失碑銘』(89)、『隠れた水』(92)、『こんな歌』(94)、『チェロ』(94)、『徳恵翁主』(95) 、『世宗32年』(96)、『私、キム・スイム』(97)、『羅雲奎――夢のアリラン』(99)、『ベ・ジャンファ、べ・ホンリョン』(01)、『荷』(07)などがある。1989年『失碑銘』で韓国百想芸術大賞戯曲賞、1994年『こんな歌』でソウル演劇祭戯曲賞を受賞、1997年ヨンヒ演劇賞、2008年『荷』で大山文学賞戯曲部門を受賞。

『こんな歌』あらすじ

ヨンオクは韓国の伝統衣装であるチマ・チョゴリの仕立て職人である。彼女は作業場で、一人ミシンの前に座り、チマ・チョゴリを仕立てている。彼女は幻聴に苦しめられ、過去を回想する。彼女の家は、代々裕福だった。しかし日本の植民地時代に親日家だった彼女の父親が、北朝鮮の人民軍に殺されて以来、家運が傾いてしまった。俗に言う裕福な暮らしを夢みていたヨンオクは、一流大学出身であるにもかかわらず、田舎で教師生活を送る夫に不満を持つ。彼女は、あらゆる方法を使って、夫のインスを国会議員にしようとする。結局、進歩政党に入党したインスは、でっちあげのスパイ容疑で逮捕される。夫を釈放させるために、ヨンオクは警察の口車に乗せられ、インスをスパイとして密告する。しかし検察は彼女との約束を裏切り、インスは死刑にされる。夫を告発し、死に至らせたヨンオクと息子ギョンフンは村を追われ、苦しい生活を強いられる なんとか大学院を出たギョンフンは、工場に就職し、労働組合に入って賃金闘争をはじめる。息子を労働組合から脱退させるため、ヨンオクは労組のアジトを警察に密告する。ところが、これを知ったギョンフンは、その場所に駆けつけ、焼身自殺をしてしまう。自分の愚かさに気付き、絶望に陥ったヨンオクは、夫と息子の幻影に苦しみ、部屋に火を放つ。

統一エクスプレス

作=呉泰栄(オ・テヨン)
翻訳=津川泉
演出=中村哮夫

出演=荒川大三郎(演劇集団円)/石坂重二(フリー)/伊藤克(東京演劇アンサンブル)/籠嶋徹也(ピープルシアター)/鬼頭典子(文学座)/二宮聡(ピープルシアター)/野口仁志(ピープルシアター)

作=呉泰栄

1948年ソウル生まれ。1974年ソウル芸大演劇科卒業。同年『歩行練習』が中央日報新春文芸戯曲部門当選。1979年韓国戯曲作家協会賞、1980年代は劇団76で活動。1987年戯曲集『風の前に灯をかかげ』出版。同年「戦争」で第32回現代文学戯曲部門受賞。アウトサイダー的視点から数々の社会諷刺劇を発表。88年『売春』は公演倫理委員会の公演不可判定が出たが敢行。公演事前審議制度廃止の端緒となった。以来、10年近く断筆。久々に発表したのが1999年『統一エクスプレス』。2000年『豚の脂身』、2001年『燃えるソファ』、2002年『きな粉』と立て続けに統一演劇シリーズ四本を発表、作風の大きな転換点となった。2003年『車輪』、2004年『ホテル フェニクスで眠りたい』、2006年『禅』、2008年創作戯曲活性化支援事業選定作品『おだやかな埋葬』は、ピンターの初期作品に触発され「従来の劇作法から脱皮、新しい変化を試みた」作品だという。

『統一エクスプレス』あらすじ

舞台は軍事境界線近くにある飲食店。店を偽装経営するウボと北側の行動隊員カプサンは越境する人々を南北往来秘密通路に案内し通行料を取って大金を儲けている。ウボはオッカという娘を利用している。秘密通路を通り、脱北した彼女はこの秘密通路こそ全国統一の道だと信じ、国境守備隊員たちに体を売って、地雷を掘りだし、秘密通路の安全を確保している。
そんなある日、某財閥会長が牛の群れを追い立てて北朝鮮を訪問し、政府がウボの飲食店のそばに公式往来窓口を開設したため、彼らの商売は閑散となる。ところが、分離体制固着を狙う機関員と武器販売業の財閥が、統一を阻止するために潜水艦などを使って局地戦を挑発しようと陰謀をたくらむ。その結果、商売は再び活気を帯び、彼らは喜々として祝杯を上げる。無邪気に「私たちの願いは統一」という歌を歌うオッカ。公式往来を待ち望む失郷民の老人は、夢に描いた故郷を踏むことができずに死ぬ。

統一エクスプレス

◯シンポジウム

「日韓演劇交流の歴史と末来」

金義卿(キム・ウィギョン)