2015年1月14日~18日
シアタートラム
◯リーディング
木蘭姉さん
作=金垠成(キム・ウンソン)
翻訳=石川樹里
演出=松本祐子
【出演】
俳優1=Kiyoka((株)MAパブリッシング)
チョウ・モンナン (女、26才) アコーディオン奏者
俳優2=寺内よりえ(劇団昴)
チョウ・デジャ(女、55才)ピンクサロン経営者/ナム・グムジャ(女、55才)チョウ・モンナンの母親
俳優3=櫻井麻樹
ホ・テサン(男、36歳)韓国史の博士号取得者、無職、チョウ・デジャの長男
俳優4=谷山知宏(花組芝居)
ホ・テガン (男、33歳)大学教授、チョウ・デジャの次男
俳優5=高畑こと美(エンパシィ)
ホ・テヤン(女、30歳) 小説家、チョウ・デジャの長女であり、末っ子
俳優6=荒川大三郎
キム・ジョンイル(男、 41歳)反北朝鮮団体会員、北朝鮮脱出ブローカー
俳優7=星野愛(株式会社ALBA)
ぺ・ミョンヒ(女、30歳)統一団体会員/民謡歌手/ユク・ソニョン(女、33歳)小学校の教師/チャ・ヨンミ(女、29歳)大学院生/リョ・モンナン ホ・テヨンが書いているシナリオの中の登場人物
俳優8=井上倫宏(演劇集団円)
チョウ・ソンホ(男、55歳)画家、チョウ・モンナンの父/オ・ヨンファン(男、48歳)映画監督/カン・グッシク(男、66歳)事業家、韓国系アメリカ人
俳優9=永野和宏(劇団新人会)
リ・ミョンチョル (男、32歳)再入国脱北者/グッ・サンチョル(男、32歳)国会議員補佐官/ヒョン・ソンウク(男、34歳)大企業秘書室職員/ヤン・ムノ(男、15歳)北朝鮮の男子中学生/チャ・ミニョク ホ・テヤンが書いているシナリオの登場人物
俳優10=永栄正顕(夢工房)
ナ・ヌリ(男、9歳)小学生/チョン・シンギュン(男、34歳)医者/ソ・ヒンドル(男、25歳)大学生/チョン・ウォンサン(男、20歳)ピザ配達員
俳優11=日沖和嘉子(SOMEYA・本舗)
ソン・ホンヨン(女、15歳)北朝鮮の中学生/ホ・セビョル(女、9歳)小学生/ノ・ミレ(女、21歳)ピンクサロン従業員/コン・ドゥソン(女、23歳)大学生
俳優12= 稲松遥
ユウ・モンナン (女、10歳) 脱北児童
作=金垠成
1977年生。全羅南道、宝城出身。東国大学北朝鮮学科中退、韓国芸術総合学校演劇院演出科卒業。在学中に執筆した『シドン仕立て店』が韓国日報新春文芸(06年)に当選し、新人とは思えぬ確かな筆力で注目を集めた。彼は一貫して社会の底辺で暮らす人々や、韓国の近現代史の暗部をモチーフにした作品を書き続けている。社会に対する作家のストレートな問題意識をユーモアを交え、時に生活感・情感のこもった方言を駆使した台詞で舞台化する作家として定評がある。特に北朝鮮から韓国に渡った女性を主人公に、韓国の現代社会を捉えた『木蘭姉さん』(12年)は、数々の演劇賞を受賞。2011年には演出家ブ・セロムとともに劇団月の国椿の花(タルナラドンベッコ)を旗揚げした。作品に『死ぬほど死ぬほど』(07年)、『スンウ叔父さん』(10年)、『月の国連続ドラマ』(12年)、『干潟』(12年)、『ロ・プンチャン流浪劇場』(12年)、『ぐるぐるぐる』(14年)などがある。
演出=松本祐子
文学座所属の演出家。1999年より文化庁派遣芸術家在外研修員として1年間ロンドンにて研修。主な演出作品に「冬のひまわり」「秋の蛍」「ペンテコスト」「ホームバディ/カブール」「ぬけがら」「大空の虹を見ると私の心は躍る」(以上文学座公演)、「ピーターパン」「ウーマン・イン・ホワイト」(ホリプロ)、「てのひらのこびと」「鳥瞰図」「やけたトタン屋根の上の猫」(新国立劇場)などがある。韓国では2006年に韓国演出者協会のアジア演出家ワークショップで鄭義信の「20世紀少年少女唱歌集」演出。また2009年には劇団美醜で井上ひさし氏の「天保12年のシェイクスピア」をペ・サムシク氏の翻案により「哲鐘13年のシェイクスピア」として演出。2005年「ぬけがら」と「ピーターパン」の演出に対し、毎日芸術賞・千田是也賞を受賞。桜美林大学非常勤講師。
訳=石川樹里
神奈川県生まれ。和光大学人間関係学科卒。大学在学中より韓国語を学び、韓国演劇に関心を持つ。大学卒業後、渡韓し、延世大学韓国語学堂卒業。89年、劇団木花の来日公演『火の国』(PARCO劇場)で通訳スタッフを務めて以来、日韓の公演スタッフとして活動。韓国芸術総合学校演劇院演劇学科卒業。
現在、ソウル在住。日韓の戯曲翻訳、公演通訳だけでなく、台本脚色、ドラマツルグなどのスタッフとして、韓国演劇に広く関わっている。戯曲翻訳多数。共訳書に『韓国近現代戯曲選』(論創社刊)。2008年『呉将軍の足の爪』(作=朴祚烈)の翻訳により第15回湯浅芳子賞受賞。
木蘭姉さん あらすじ
北から来た女、木蘭。平壌で音楽家としてのエリート教育を受けた彼女は、ある日突然事件に巻き込まれて韓国に渡るが、もう一度愛する家族と暮らすために、なんとしても祖国に帰りたい。
そしてもう一人の女、ソウルで水商売を手広く営み女手ひとつで三人の子供を育ててきたチョウ・デジャ。太山、太江、太陽と名付けた息子と娘と、木蘭が出会う時、南と北が出会う時、それぞれの愛と欲が絡み合い、現代の韓国社会の闇が浮き彫りになる。
2012年東亜演劇賞戯曲賞を受賞し、その年の演劇評論家の選ぶ今年のベスト3に選ばれた問題作。混沌とした社会に救いはあるのだろうか……。
五重奏
作=金潤美(キム・ユンミ)
翻訳=鬼頭典子
演出=保木本佳子
【出演】
キム・キプン(70代)=父 山野史人(劇団青年座)
ヨンスン(40代)長女=都築香弥子(オフィス・ミヤモト)
ヨンファ(40代)次女=小山萌子(エンパシィ)
ヨンオク(40代)三女=秦由香里(演劇集団円)
ヨンジン(20代)四女=長尾奈奈
スク(50代)幽霊=藤堂陽子(劇団文学座)
イファ(10代)幽霊=角谷邁
クムスン(50代)幽霊=南谷朝子(青年座映画放送)
サンピル(40代)キム・キプンの従兄弟、アルコール中毒者=岸槌隆至(劇団文学座)
クォン先生(40代)漢方医=青木鉄仁(劇団青年座)
仮面をかぶった幽霊たち 多数
ト書き=町田カナ
劇中歌作曲=南谷朝子
アドバイザー=沈池娟 演出助手=五十嵐大祐
作=金潤美
1967年、慶尚北道奉化に生まれる。小説を書くために入学した中央大学文芸創作学科在学中にベケット、イヨネスコなどの影響を受け、劇作を開始。たちまち1988年、『列車を待ちながら』で東亜日報新春文芸戯曲部門に当選、登壇。卒業後、社報の記者をしながら順調に創作活動を重ね、数々の有名演出家と出会う。1993年、第1回大山文化財団創作支援に選定。延世大学大学院国語国文学科修士課程、博士課程終了。公演戯曲に『五重奏』『メディアファンタジー』『楽園での昼と夜』『結婚した女、結婚しなかった女』『チェア』『椅子』『ナクタプル』他、戯曲集に平民社『キム・ユンミ戯曲集1~4』がある。デビュー以来、自身の経験に基づいた激しく鮮烈な作品を生み出してきたが、近年は作風の幅を広げ、『京城スター』(演戯団コリぺ、イ・ユンテク演出、大学路芸術劇場大劇場)のような、韓国エンターテインメントを意識した作品も見られる。
演出=保木本佳子
脚本家・演出家。大阪芸術大学舞台芸術学科非常勤講師。大阪現代舞台芸術協会(DIVE)理事。
2005年、大阪芸術大学大学院芸術制作研究科修了。同年、処女戯曲「女かくし」で第3回近松門左衛門賞優秀賞受賞。2012年、第2回日韓演劇フェスティバル「小町風伝」に出演。韓国人演出家の李潤澤氏と出会う。李氏の劇団「演戯団ゴリペ」によって戯曲「ふくろのケムリ」が韓国語に翻訳され、ソウル・釜山等、韓国3都市で上演される。これをきっかけに、韓国演劇人との交流が増えていく。韓国現代戯曲ドラマリーディングVol.6では「海霧」にナレーションとして参加。2013年4月、東京で劇団「ケムリノケムリ」を旗揚げ。初公演の主演に韓国人俳優を迎える。2014年「中房総国際芸術祭いちはらアート×ミックス」おけるプロジェクト「いちはら人生劇場」に劇作で参加。韓国人演出家の姜侖秀氏、フィンランド人パフォーマーヘイニ・ヌカリ氏と共に演劇・展示作品を発表した。
訳=鬼頭典子
フェリス女学院大学文学部国文学科卒。本業は文学座所属の女優。2009年3月、韓国現代戯曲ドラマリーディングvol.4『統一エクスプレス』に出演したのを機に韓国演劇に興味を持ち、2010年12月より、文化庁の新進芸術家海外研修制度で一年間ソウルに留学。国立劇団等で演劇、韓国舞踊、パンソリなどの研修を受けながら、高麗大学の語学堂で韓国語の研修も受ける。2011年12月に帰国後、2012年5月の光州平和演劇祭、2013年8月の密陽演劇祭に俳優として参加。翻訳は今回が初挑戦。日韓演劇交流センター専門委員。
五重奏 あらすじ
90年代中頃のある夏の日。韓国の田舎町にある古い家に集まった家族。この日、彼らの心の叫びが「五重奏」を奏でる。
一家の父キム・キプンは、利己主義で古い風習に囚われている70代の老男。後継ぎとしての息子を持つことを強く望み、妻以外の女性とも関係を持つが、何の因果か娘ばかりが生まれる。危篤を装い、バラバラに暮らす四人の娘を呼び寄せたキプン。数年ぶりに集まった腹違いの四姉妹。それぞれ人生に苦労と不満を抱える彼女たちは、互いを意識し衝突する。そこへキプンと関わりのあった女性たちの霊も集まってきて、蔓の絡まる古い家は、傾き地面に沈み込んでいく……。
血縁や因習、過去やトラウマ。登場人物は皆、何かに取り憑かれていて自由に歩くことが出来ずにいる。家族のアンビバレンスな思いは互いの人生と運命を浮かび上がらせて、新しい朝を迎える。
アリバイ年代記
作=金載曄(キム・ジェヨプ)
翻訳=浮島わたる
演出=公家義徳
2013年作品
【出演】
父キム・テヨン=中山一朗
ジェヨプ=石母田史朗(劇団青年座)
少年(テヨン)、少年ジェジン、少年ジェヨプ=津田修平
青年(テヨン)、ジェジン=ハゼヤマ俊介(演劇集団円)★
母、おばさん=高村尚枝(劇団文化座)
伯父さん、本屋の主人、刑事の班長、校長、嶺南政治家1、酔客=井ノ口勲
従兄弟の兄さん、少年の父、青年の兄、おじさん、刑事、ヨンヒョン、南総連、国土開発)要員1、嶺南政治家2、宣銅烈=加藤裕(SET)
班長、ソンフン、店員、張り紙職人、新聞売り、応援団長、医師、(国土開発)要員2=廣畑達也
ト書き=日下範子
演出助手=林ちゑ 映像=高橋啓祐
作=金載曄
1973年、大邱生まれ。演出家、劇作家。「劇団ドリームプレイ」代表。世宗大学映画芸術学科教授。延世大学国語国文学科を卒業後、漢陽大学大学院演劇学科に進み、博士課程修了。06年から10年まで恵化洞一番地四期同人として活動。1998年『九つの砂時計』で韓国演劇協会の創作劇公募に当選、02年『ペルソナ』が韓国日報の新春文芸戯曲部門に当選。「劇団パーク」の創立メンバーとして02年『チェックメイト』を作・演出し、演出家としてもデビュー。05年「劇団ドリームプレイ」を創立し、その創立公演『幽霊を待ちながら』は居昌演劇祭大賞および演出賞を受賞。「時間」「死」「待つこと」に関する哲学的寓話に土台を置いた才気はつらつとした初期の作品から、同時代の社会問題に対する積極的関与と変化を模索する作品に、関心を広げている。『まほろば』(蓬莱竜太作)、『背水の孤島』(中津留章仁作)など日本の戯曲も演出している。
演出=公家義徳
東京演劇アンサンブルの俳優・演出家。
俳優としては、故・広渡常敏に見出され1998年頃から劇団の主要作品で主役をつとめてきた。海外公演の実績も多く、7か国11都市での主演公演を経験し高い評価を得ている。
演出家としては、広渡の死後、2007年より積極的に取り組んでいるが、2013年3月にはボートー・シュトラウス『忘却のキス』2014年9月にはデーア・ローアー『無実』と、ドイツ現代演劇を代表する劇作家の難解なテキストにも挑戦。「俳優の身体性の無駄を削ぎ、セリフを抑制し、戯曲のエッセンスを凝縮し、極限まで洗練する」「寸分の迷いもない、大胆かつ的確な演出」などと評された。また、中学・高校生への演劇ワークショップ講師なども定期的に行い指導的な役割を果たしている。
訳=浮島わたる
浮島わたるはペンネーム。劇団所属の俳優。
2007年度文化庁新進芸術家海外派遣制度により、ソウルに1年間留学。留学中、日本の戯曲が数多く翻訳、上演されているのを目の当たりにし、韓国の戯曲が日本でも同じように上演されることに少しでも貢献できればと、翻訳作業を始める。戯曲探しのため、そして、日本と韓国の演劇交流のため、酒が飲めないにもかかわらず、韓国演劇のメッカ、小劇場ひしめく大学路の酒場に夜な夜な現れてはソウルの演劇人たちと親交を深める。本シリーズではⅥに所収の『朝鮮刑事ホン・ユンシク』の翻訳も手がける。
写真は韓国での公演舞台写真と作家。
アリバイ年代記 あらすじ
父の流した涙の理由とは…
2013年に東亜演劇賞(作品賞、戯曲賞)を受賞したこの作品は、作・演出のキム・ジェヨプ本人と父テヨン、兄ジェジンの年代記をドキュメンタリー的に綴った叙事的な物語である。
1930年植民地時代に大阪で生まれ育った父キム・テヨンは1946年、解放の翌年に祖国朝鮮の地へと戻り、その後1955年に定年を迎えるまで大邱中央高校で英語の教師を勤めた。2003年12月、その父が病床で、息子ジェヨプにある秘密を語り始める。
作者・演出のキム・ジェヨプは劇中でもジョエプ本人として登場する。父の背中を見つめながら過去を振り返り、語り、生き方を模索していくジェヨプ。終戦、朝鮮戦争、韓国民主化闘争、大統領選挙……混乱した時代の大きな流れに翻弄されながら生きた父とその二人の息子たちの年代記を、自己告白的にありのまま語ることで、彼らをとりまく社会の闇が暴き出されていく。
◯シンポジウム
女性が世界を変える
金明和(キム・ミョンファ)/金潤美/永井愛/小林七緒/大笹吉雄